どこに投稿するか

危ない研究指導者はここでわかる」で、話しました。いきなりLancet、BMJやJAMAなどの著名な総合医学雑誌にキャリアの浅い研究者は投稿するべきではありません。
1. 門前払いを食らうだけで時間の無駄になる。コメントがないので論文の改善ができない。

2. こうした雑誌は当該分野だけでなく、広い読者層に読まれる。したがって、メッセージの内容は無論だが、それが明快に他の分野の読者にも伝わらなければならず、そうした意味での著者の経験と技量が問われる。

 

これに対する反論として、「(筆頭)著者がいくら初心者でも、この研究結果は素晴らしいから受理されるはずだ」というのがあるでしょう。確かに可能性としてそれは否定しません。でも稀だと思います。

 

「その論文」に少しでもかかわる人々は、著者以外には編集者、査読者、そしてその雑誌の読者でしょう。全て、広い意味で「読者」です。著者以外はつまり、全員読者です。編集者は、雑誌の読者を考えて論文を評価しますから、「読みにくい、あるいは読むのに努力のいる」論文は内容のいかんにかかわらず真っ先に蹴られます。

 

このReadershipは、総合雑誌であればあるほど重視されると考えるべきです。各分野の専門雑誌と違い、必ずしもその分野に詳しくない人でも読むのですから。その分、経験と技量が求められます。

投稿雑誌

 

投稿雑誌選定基準(重要度順)

 

投稿雑誌を正しく選ぶことはとても重要です。受理の可能性が上がりますし、正しい読み手に読んでもらえるからです。

 

1. まず大前提は査読のある雑誌です(和文、英文どちらも)。

  査読がなければ、業績とは認められません。

 

2. 論文の分野を掲載している雑誌

  例えば同じ糖尿病でも機序など基礎的な研究を掲載する雑誌と、診療や予防など臨床的な論文を掲載する雑誌があります(後述)。

 

3.読者の多い雑誌

  それだけ、研究者のメッセージが多くの人に伝わります。

 

<英文雑誌>

研究初心者が投稿するべき基準は、

PubMedに掲載されている=Medlineで検索できる、です。

世界の読者に読んでもらうことが大事です。Impact Factor(IF)などはあまり気ににしなくていいでしょう(本来IFは1あればまともな雑誌です)。

 

*投稿雑誌候補

引用文献の中から候補を見つけるのは、実際的な方法です。Inoue Methods作成者も、よくそうしています。ただし、引用文献になるのはかなり水準の高い雑誌からが多いことも事実で、留意しておきましょう。

Inoue Methods作成者が持つもう一つの基準

論文作成もスムーズに、スピードアップしていくことを主眼にしていることがあります。それは何でしょうか?

 

少し考えて、へ飛んでください。

投稿規定をきちんと読む

同じ分野でも、雑誌によってどのような論文を取り上げるか(Scope)が違ってきます。

ですので投稿規定の冒頭をきちんと読みましょう(特に原著の場合)。

 

次の2雑誌はいずれもAmerican Diabetes Association (ADA)の医学雑誌です。投稿規定の冒頭を読むと、各々の雑誌がどんな論文の掲載をしているかわかります。

 

Diabetes Care is a journal for the health care practitioner that is intended to increase knowledge, stimulate research, and promote better management of people with diabetes. To achieve these goals, the journal publishes Original Articles on human studies in the following five categories: 

1) Clinical Care/Education/Nutrition/Psychosocial Research

2) Epidemiology/Health Services

3) Pathophysiology/Complications 

4) Cardiovascular and Metabolic Risk

こちらはですから、臨床や疫学の論文を掲載します。 

 

Diabetes publishes original research about the physiology and pathophysiology of diabetes. Submitted manuscripts can report any aspect of laboratory, animal, or human research. Emphasis is on investigative reports focusing on areas such as the pathogenesis of diabetes and its complications, normal and pathological pancreatic islet function and intermediary metabolism, pharmacological mechanisms of drug and hormone action, and biochemical and molecular aspects of normal and abnormal biological processes. Studies in the areas of diabetes education or the application of accepted therapeutic and diagnostic approaches to patients with diabetes are not published.

こちらは糖尿病の発症機序に関わる基礎的研究を、動物を含めて掲載します。赤字にあるように、治療など臨床に関わる論文は掲載しないと言い切っています(Diabetes Careがあるからでしょう)。

 

雑誌が掲載している分野の論文を投稿する、当たり前ですが、投稿規定をきちんと読まないとそれはできません。

Impact factorについて考える

投稿雑誌を最初に選ぶことは既述しました。関連して、英文雑誌の中でImpact factor(IF)を、投稿誌選定の際にどう考えるかについて述べます。
ここではIFについて詳述はしません(Wikipedia、この記事は良く書かれています)。簡単に言うと、ある雑誌の論文が平均して過去のある期間にどのくらい他雑誌の論文に引用されたかで、その雑誌の影響力の指標とされています。ですがよく言われていることですが、基礎科学系などはばりばり引用しますし、社会医学系ではそれほどでもないことから、分野自体によってIFが高い場合と、低い場合があります。

 

IFの問題点はそれだけではありません。しかしながら、それ以外に有力な方法もないので、研究者はこのことを知ってIFを取り扱えばいいのです。

 

英文雑誌を考えるとき、次の3つに分かれます。

1. Medlineに掲載されず、したがってPubMedで検索できない

2.Medline掲載、しかしIFはない(将来つくかもしれないが)

3.Medline掲載、IFもついている
私見ですが、投稿すべきは2と3です。無論、3に越したことはありません。
IFの値ですが、各分野によって全く違うということではありますが、1.0あればその雑誌は「ひとかどだ」と言えます。

 

なお、IFと研究者の評価については、どんなに高いIFの雑誌に共著で名前を連ねていても、筆頭とSecond以外はあまり評価しません。有名雑誌へ掲載される論文は著者が多くなりがちで、実際の貢献は希薄化します。それより、IFがそれほど高くなくても、筆頭著者*だったり、より好ましいのは単著であればそちらのほうを評価します。通常は、「その研究者」が主体的に、その論文に関わったことを示しているからです。

 

*筆頭著者でも実は指導者が論文の大半を書いたというケースが良くあります。

 

私見「Impact Factorってっこんなもの、って知っているだけで十分」

 

Note:私は臨床医学系の論文も、社会医学系の論文も書いていますが、分野でのあまりのIFの違いに、「なんだかなー」と思っています。自分の中では、かなりいいほうだと思う後者の論文が、「まあまあ」という前者の論文の1/5なんてことがありますので。

Impact factorを調べる@自宅など

Impact factorがどうやって生成されているかを理解したうえで、利用するのは良いと思います。それではどうやって調べればいいでしょうか。

 

Thomson Reuter社が運営しているISI Web of Knowledgeにアクセスするのが正規です。大学などの研究機関であればほとんど加入していますので、ネットワーク内にいればそれで調べられます。

 

ですが、外から調べる場合はどうでしょうか。この著作権はおそらくThomson社が保有していると思いますので、ISI Web of Knowledgeに入れなければわからないのが原則でしょう。ですが条件や制限はつきますが、調べることのできるサイトはあります。

 

Medical Journal Impact Factor 2011

 宣伝付ですが、カテゴリー別に調べられます。ただし各々上位40誌までのようです。

Abdom Imaging - Biological Sciences

 説明がないのですが、どうやら1999年のもの? ここまでいくと著作権も問題ないのでしょうか(笑) 参考にはなると思います。

Journal Impact Factor

 Impact factorが58(!)から1.11までの1500誌が掲載されています。正式には有料利用で、テキスト検索などはできないようです。

 

Note:Inoue Methods作成者は著作権を遵守します。したがってこれらのサイトが抵触している場合は、お知らせなく削除するかもしれません。