私たちの講座では、2つのResearchを主眼においています。家庭医療、プライマリ・ケアを包含して、地域医療「学」の確立にはこの2つが必須です。


・Practice based research(PBR)

・Health policy research(HPR)

 

「現場の臨床家の思いは、PBRによって医療に反映し、HPRによって医療政策に反映しうる。そしてどちらも、人々に貢献しうるのだ」

Practice based research

「日常診療で通り過ぎていくところにテーマはある」

診療所や病院など、医療施設に限定することもありません。個人、家庭、地域、社会を見据えたとき、その全てのレベルで、テーマは横たわっています。それを形にし、メッセージとして発していく、それがPractice based researchです。

(Practice based) Health policy research

「医療政策もまた研究によって推進されなければならない」

Practice based researchは、日々の診療から生まれる研究です。プライマリ・ケアの現場でいかに我々は行動するべきかが焦点です。

一方で、医療サービスなどのケアをどのように提供するかもまた、重要なテーマです。例えば、より均等で水準を保つ医療アクセスを実現するにはどのような人材を養成し社会に出していくかがあげられます。こうした研究、Health policy researchもまた、現場で得られた疑問や仮説で行われてこそ、実際的な成果を生みます。すなわち、Practice based-Health policy researchです。

Process

現場の想い→科学的記述(論文)→エビデンスの積み重ねと政策提言→国家的取り組み→対象者に還元

なぜ、研究を推奨するのか

出展 フリーイラスト素材「Natural」
出展 フリーイラスト素材「Natural」

なぜ、研究を推奨するのか。それは大人の学び、Adult learningに学究的態度が欠かせないからです。


小中学校の初等教育、高等学校、あるいは大学の学部教育においても学習者(学生)は教師から「学習する」という面が強いと思います。そこでは、知識は教育者から学習者へ一方向に受け渡され、学習者はその知識を身につけることが求められます。


では大学院においてはどうでしょう。学習の面は依然残るでしょうが、得た知識をもとに学究することが求められます。大学(院)を出て社会人になったときはどうでしょう。もう生徒ではなくなり、教室の椅子に座って受動的に知識をもらう時期は過ぎました。おおまかに言って、次の2つが求められていると思います。


・それまでの学びで得た知識を、現実の世界で生かしていくこと

・それまでに得た知識では対処できない問題に、取り組むこと

 
前者は知識を現実に沿うように適応(translation)させていくことが求められます。時には知識を統合し、あるいは簡素化していく。この時までは「学習」であったものが、このときには「学究」となります。後者は、知の連続性で視野を拡げていく、あるいは一つの学(学習)からもう一つの学(学究)へ遷移することになります。

 

また、こうしたことは稀ではなく、私たちの世界では、毎日ではなくとも頻々におきていることではないでしょうか。自分のそれまで持っていたものでは対応できず、どうするかを考えなければいけないことです。そしてこの過程で、学究者は想像力を膨らまし、それが創造力となっていく。


そして、このようにして実践された結果は、知の財産として多くの人々に共有されたほうが好ましいのは言うまでもありません。