危ない研究指導者の害悪

研究指導できないのに研究せよと言って、部下を締め付けるというのは話した通りですが、実はもっとたちの悪い害悪があります。

 

「自分が研究指導できないので、研究のできる若手に指導させる。ひどい場合にはゴーストライターになれと言う」

 

Inoue Methods作成者はこれで、修士・博士論文のゴーストライターを強要された人を知っています。今の研究倫理基準からいえば逸脱もいいところ、そして権力をかさにきたパワハラもおまけにつきますね。

 

(ここにはいないと思うが)、「危ない研究指導者さん」、こんなことをしていると、自分の下から外れたときに告発されたら終わりですよ。

(今もいると思うが)「研究できる若手の方々で」ゴーストライターを強要されたら、ここを見せるくらいの度胸は出してくださいな^^

 

*Inoue Methods参加者の方々の発言も参考にしています。なお、上記から一番リスクの状態がわかりますね。そう、研究できないのに院生をとっている指導者の下に、できる部下が行った場合です。

危ない研究指導者はここでわかる!

関連項目:研究指導者の資質

Another possible talk: いいか、俺は絶対セカンドだからな!
Another possible talk: いいか、俺は絶対セカンドだからな!

本人の業績をPubMed*で探すのが一番ですが、他にもこんな徴候があります。いずれも経験のなさ(そしてそれを隠そうとする)が根底にあります。「仰ぎ見る師」とは真逆の存在です。

*PubMedの検索ボックスに英語のフルネームを、氏名の間にカンマとスペースをつけ、スペースなしで[author]と入れます(例:Inoue, Kazuo[author])。 同姓同名もありえますが、検索したい人の業績は概ねわかります。

 

0.最も大事なことです、自分の筆頭業績を開示しないそれは多かろうが自慢ではありません、どうせその業績は、誰かが追い越していくのですから。およそ研究者はそうですが、特に指導者において自分の業績を出さないなどあり得ません(第一、信用できません)。ここで言う業績とは、原著論文のみです、なぜなら若手がそれを目指しているのですから。教授やってる、本を作った、座長をした、海外から著名人を呼んだ、知ったこっちゃありません。→さっさと自分で指導者候補の業績を調べましょう。なお、大学の講師以上で研究指導をする立場の人なら、第2著者(Second author)であることも、研究指導として評価の対象になります。

 

なお、大学院生になるときには上記は必須です。指導者が学位を持っていたって、それで指導できるとは限りません。学位とはすなわち、「研究者としての初心者(スターター)ライセンス」ですから。指導者がスターターライセンスだけでは仕方ないでしょう。豊富な研究経験、それも研究する分野のそれを持っていることが重要です。例えば社会医学研究をするのに、指導者が持っている学位や業績の分野が基礎医学である、そんなこともあるのです。それでも、全く学位論文+αしかないよりはましでしょうけど。学費と時間を費やす価値があるか、よく指導者を吟味しましょう。→Inoue Methods作成者自身に帰ってくることですが明記しておきます。

 

Disclosure is 'Panacea.' (情報開示は万能薬である)

 

0'. 上で見た指導者の業績と、若手研究者に言っていることに食い違いがある。

Note:誰でも、自分が実際に経験してきたことしか教えられません。

 

1. 若手の論文をすぐ、LancetやBMJつまり著名総合医学雑誌に出せという。

Note:指導者は、投稿すべき妥当な医学雑誌(the right journal to submit)を示すべきです。

 

2. 「一流雑誌は投稿したらさ、コメントくれるから、却下されても参考にしたらいいんだよ」

Note:そんないい加減な投稿は査読なしの門前払いです。そうしている間に、時間だけが過ぎていきます。そして若手研究者は消耗していく。

 

3. 「却下されたらさ、直さずにそのまま格下の雑誌に出せばいいんだから」

Note:そんなことしていると、投稿する雑誌がなくなります。実話として、どうしようもなくなって若手研究者が相談に来たら、PubMedに掲載される雑誌に全て蹴られており、結果としてPubMed非掲載の英文雑誌に投稿・受理となりました(本来それでは英文誌に投稿する意味が損なわれます)。いくつもそうしていると、同じ査読者にあたる可能性もあり、その場合は即却下になる可能性大です。

 

4.「なにこのEditor、厳しいね。気にしなくていいよ」

Note:Editorの発言は著者グループに対してだから、指導者に責任があります。

番外編

1. 海外などの論文から図表などを引っ張ってきているのに、引用を表示しない。

  (確かに忘れることもありますが、気づいたらすぐ引用すべきです)

2. 外部の研究者を研究グループに入れたがらない。

  (必要であればどんどんそうするべき、研究はオープンな知的活動ですから)

3. 自分を脅かす(と思う)研究者はとことん攻撃する。

  (みんなで知恵を出し合っていいものを作り、若手を育てるべき)

4. PubMedで筆頭原著が1本もないのに、研究セミナーで講師・座長をする。

  (ある意味尊敬する)

5.2とはうらはらに、やたら海外から講演に呼びたがる。

  (でもってそれで終わり、あとがない、明治時代じゃございません)

  (実際に共同研究をしていないので、呼ぶのはタイトルのある人だけ)

 

Note:

「5」は結構いい指標です。Inoue Methods作成者なら、今一緒に共同研究をしている人を呼んで話をしてもらいます。タイトル保持者(例えば学会長とか)言うのより、ずっと実になります。理由は明白、今、ONに研究しているんですから。タイトルのある人はセレモニーで話してもらえばいいんです。なんたって、神輿なんですから。

危ない研究指導者ってはびこってるんだ

これは、ある教授との会話です。
A教授「僕は立場上、よく学位論文審査の主査をするんだけど、先生の「危ない研究指導者」を見て、誰のことなんだろうなあ、僕の近くにも思い当たる人がいるけど、と思った」
Inoue Methods作成者(IM)「先生の立場なら、主査になることは多いですよね」
A教授「うんそれで、困ったケースの主査に立場上なることが多いんだけど、一番困るのがその「危ない研究指導者」なんだよ」
IM「それはどういうことですか」
A教授「指導者に研究and/or研究指導能力がないものだから、若手が学位審査に出してきた論文がとてもレベルが低いんだ」
IM「その経験は僕にもあります。読んで理解できない、そもそもこれは論文か?と思うのがありますね」
A教授「そういうのは審査を受けるのはやめなさいと指導者が言うべきなんだけど、指導者本人がわかってないからね。どしどし出してくる」
IM「そうすると審査委員全員が困りますね」
A教授「この論文ではだめだから、と言っても指導者がわかってないから「なんでダメなんだ」とクレームをつけてくる」
IM「それは大変です」
A教授「先生の地域医療学のサイトみたいに、一刀両断できればいいんだけどね」
IM「僕が「危ない研究指導者」のページを出したのも、あまりにもその被害を受けている若手が多いからです。そしてそういう指導者に限って、若手が他に指導を受けるのを嫌がります」
A教授「そりゃそうですよ。自分が研究and/or研究指導できないのがばれてしまうもの」
IM「どうやらどこにでもある問題のようですね。頑張ってあのサイトで取り上げます」

さてここまで読まれた方へ

このページではここまで、「危ない研究指導者」について書いてきました。ところがみなさん、世の中にはもっとすごい例があります。

 

寒すぎる研究指導者

見たい方はぜひ、Fired to the Pruto(冥王星まで飛ばされた)を読んでください。