ここでは、和文雑誌と英文雑誌に分けて解説しています。がしかし、本質的には同じです。

和文論文

ここではInoue Methods作成者が関わっている、へき地・離島救急医療学会誌の投稿規定をとりあげます。詳しくはサイトをごらんください。どの国内雑誌も多少の差異はあっても、ほぼ同カテゴリーの種別になっていると思います。

 

原著論文:

新たな知見を提供する論文であり、単なる調査・事例報告ではなく評価・検討を行い、新知見または創意が含まれている研究論文である。 

 総説:

 ひとつのテーマに関連する多くの研究論文総括・評価・解説であり、読者に当該テーマにおける経緯を踏まえた最新の知見を提供するものである。 

 調査報告:

へき地・離島医療に関する実態調査等の報告でデータ自体が利用価値を有している論文。 

 事例報告:

へき地・離島医療に資する症例や事例等の報告。 

資料:

ガイドライン、統計的データ等で、へき地医療の向上に活用できるものである。 

話題:

へき地・離島医療に関する最近の話題および意見。 

 

*ここでわかるように、原著には「この論文を読んで初めてわかること」が含まれていなければなりません。つまり、What this study adds.です。

*論文としては、原著にはならない場合も、他カテゴリー(調査報告、事例報告など)では検討の余地がありえます。

*この雑誌にはありませんが、雑誌によっては原著の中にShort reportsに相当する「短報」などを設けています。この雑誌では、それも原著に含まれると考えると良いでしょう。

 

そして忘れてはならないのは、雑誌のScope、つまり取り扱う論文の範囲です。この雑誌に投稿する場合であれば、へき地や離島の医療に関する事柄でなくてはいけません。

 

「当たり前だが、どんな論文を掲載するのか投稿規定をきちんと読む」

ここを間違えると、門前払いになり無駄な時間を費やします。

英文論文

ここではInoue Methods作成者が最近掲載した、Diabetic Medicineの投稿規程を例にあげています。比較的典型的でわかりやすいと思うからです。当初はLancetやBMJも思いましたが、こうした総合医学雑誌はややカラーが強いことと、あまり簡潔になってないので、こちらにしました。*なお、赤字はぜひ見ておいてほしいところです。

 

Types of Article

The following types of article will be considered for publication: 

Original Articles 

Original research studies of relevance to diabetes mellitus science and practice. Clinical science and clinically relevant basic science papers will be considered. Maximum length 3000 words, with 30 references.

 *糖尿病の知見と診療に関連する、臨床あるいは臨床に直結する基礎科学論文を取り上げると書いています(ということで純然たる基礎科学論文は載らないでしょう)。論文本文の語数は3000語まで、引用文献は30まで。一昔前では少ないですが、現在ではこのあたりが標準と思います(漫然と書いていたら、すぐに超える語数です)。

Clinical Practice 

Original articles focusing on issues directly related to the clinical presentations and management of diabetes mellitus.

 *上記の原著の中でも、糖尿病の臨床症状と管理に関する論文はこう名称付けています。どうやらこの雑誌は、臨床重視のようです(それもあって例にとりあげました)。

Epidemiology 

Papers considered for this section are most likely to be successful if they are the first contemporary report of the prevalence of, for example, glucose intolerance (or the first report using good methodology) in a particular population group, preferably in which there is international interest, and/or if through the description of the distribution of, for example, diabetes or glucose intolerance by particular population characteristics or by identifying an association with putative risk markers, the data suggest new aetiological or pathogenic hypotheses.

*多くの雑誌は特色ある論文を掲載しようと考えています。この種別がそれにあたりますね。Epidemiology、つまり疫学的論文ずばりです。特定の人口集団での糖尿病や耐糖能障害について、その考えられる原因について仮説などを提示せよと書いてあります。Pima Indianの例を取り上げるまでもなく、人種や生活様式がその有病率に与える影響は重要ということでしょう。

Note:もし論文がこれに合致するなら、とても有利であることも意味します。


Short Reports 

Brief (1500 words, with one Figure and one Table and up to 30 references) reports of original or important observations. Rapid publication can be offered in this category.

初心者へも推奨している、もう一つの原著です。論文本体は1500語まで、Figureが1個まで、Tableが1個まで(どちらか1個でもOKという意味)、で引用文献15まで。典型的種別です。


Case Reports 

Descriptions of unusual clinical cases carrying a new or important message. Case Reports should be no longer than Brief Reports.

 *いわゆる症例報告ですが、単にそれでは×で、やはりWhat this study adds.つまり新知見が必要ということです。

Reviews 

Often invited, but unsolicited reviews are welcomed. All will undergo peer review. Reviews should aim to be comprehensive and should include the search methodology used to find the source data. Maximum length 5000 words and 50 references.
*総説ですね。しばしば著者は依頼されて書くことが多いですが、そうでない場合も歓迎するとありますう。当たり前ですが、読者にそのトピックに対する広範な知識を提供すること、そして出典を明らかにすることが求められます。総説はどの雑誌でも多い語数・引用文献が受け入れられます。

Note:もしある研究トピックについて、多くの論文を調べたとしたら、総説を書いてみるのも一案です。昔は、総説はその道の大家が書くものと認識されていましたが、っこれだけ情報がオープンになり、系統的レビューが普及してきたらそれにこだわることはなくなってきています。

 

Special Reports 

Often, but not exclusively, publication of Diabetes UK reports of importance to the diabetes research and clinical practice community.

*この雑誌の出版元である英国糖尿病学会やその他関連団体の重要報告を掲載します。医学雑誌にはこうした広報的な役割もありますね。

Technical Reports 

Short reports of newly available products with independent observation of their usefulness.

*糖尿病に関わる、新しく開発された検査法などの報告。Short reportsの中のサブカテゴリーのようです。


Letters 

Comments on previously published papers(1), items of topical interest(2), and brief original communications(3) are encouraged for consideration under this heading. The length, including references, should not exceed 800 words plus one figure or table. The letter should not normally be divided into sections. Please give the name and addresses of authors at the end of the letter.

初心者に推奨しているもう一つのカテゴリーです。この雑誌では比較的様々なレターを受け付けています。

(1)これまでにその雑誌で出版された論文に対する意見→一番受け付けているカテゴリー

(2)その時点での話題に関するOpinionなど

(3)Originalityはあるが非常に短いもの

そして1つのFigure/Tableと800語まで(引用文献含めて)。Abstractはなく、IMRADの形式も取らない。

Note:これで想起するのは、この雑誌の場合Letterは刷り上がり1ページを想定していますね。本文は600-700語と言うことになります。小論文の推奨を見ると分かりますが、雑誌でかなりフォーマットが違います。きちんと読むことが大事ですね。


Media review Book reviews etc.

*これは割愛します。

 

全ての論文に必要なこと(重要)

 全ての論文、つまり原著であるかそうでないかによらず求められていることがあります。それは、

 

「その作品が作者が独自に作成したものであり、他人の文献やアイデアによるものでないこと」、です。

 

 原著論文(Original article)であれば、「得られた結果」の新知見も求められます(上記参照)。ですがそれ以外の論文も、独創性は必要です。そうでなければわざわざ論文にする意味はありません。

 

 雑誌によっては、上記に述べた以外のカテゴリーの論文も掲載することがあります。例えばIM Mentorらが最近投稿した雑誌では、医療政策に関する調査を掲載する(Health)Policy Reportがありました。それはわが国の僻地医療政策の基本的要素の一つである「無医地区」に焦点をあてたものです。論文としてはその無医地区の意義を検証したものであり、無論原著ではありません。しかしその視点と、得られるメッセージは独自のものでないといけません。

 

独創性は全ての論文に必要である

さらにその中で、新知見が原著に必要である

 

 ではその独創性(独自性)はどうやって保障されるのでしょう。

・「著者らがこの論文は独自ですと主張」→×(誰がそんなもの認める?)

・「指導教官や所属部署がこの論文は独自と主張」→×(COIの泥まみれ、ありえない)

 

 上記を認めれば、文献から引用なしの盗用(剽窃)も野放しになるでしょう。結局、世界に公開して、独自であると認められるしか方法はありません。

 

IM Mentorの意見

「全ての科学論文は適切な雑誌において第3者の査読を受けた上で、掲載される過程を経なければ独自性は担保できない」

*第3者の査読=予備的な独自性の検証

*出版されて公開=本来的な独自性の検証(全ての人がかかわりうる)

 

Note:かのSTAP細胞論文にかかわる一連の出来事を考えれば、議論の余地はないと思います。