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AMOSの誇大表現

AMOSなら因果がわかるぞ!→嘘のエビデンスが広がっていく
AMOSなら因果がわかるぞ!→嘘のエビデンスが広がっていく

内容としてはInoue Methodsグループに投稿すべき専門的なことかもしれませんが、広く知っていただきたく、ここに書きます。

それは共分散構造分析ソフトウェアAMOSのことです。「回帰分析、因子分析、相関分析、分散分析などの標準的な多変量解析を拡張し、より現実的なモデルを作成でき、また自分でモデルを指定、推定、検証できます」とあります。ここまで読めば、まるで「夢のソフトウェア」と思う人がいるのも理解できなくはありません。

http://www-06.ibm.com/software/jp/analytics/spss/store/stats/amos.html
しかし横断データでいくらAMOSを使ったからと言って、原因と結果の構造や関係つまり因果関係までわかるわけではありません。データそのものが横断的であるがゆえに、「鶏が先か、卵が先か」については言えるはずがないのです。ですが、いろんな学会で因果まで明らかにしたというような表現があって、間違ったエビデンスを提供しています。

以下はある新進若手研究者(Aさん)との対話です。

A「私は尺度開発をした時に、確認的因子分析を行うのに、一度だけ使用したことがございますが、その後は全く使用しておらず…といった感じです。」
IM「それは正当な使い方ですね。いろんな発表を見ていると、AMOSでやっただけなのに、「因果構造をあきらかにした」なんて表現にいきあたります。じゃあ、コホート研究や介入研究はいらんのか、と言いたくなります。
A「先生の仰る通り、横断データにもかかわらず、勝手に矢印を描いて、あたかも因果関係を明らかにしたかのように記述している発表をよく目にします(←これが医学系で共分散構造分析が好まれない大きな理由のように思います)。因果関係があると結論付けるには、やはりコホート研究が必要のように思います。」
IM「激しく同意! 嬉しいですね^^」

かのFramingham研究や久山町研究、そしてその他多くのコホートや介入研究がなされてきたこと、それらはなんのためにあるのでしょうか。そしてそれらを支えてきた無数の人々の貢献は? AMOSで横断研究でやってみて、まるで同等の成果を上げたと言わんばかりの表現が跋扈しています。IM Mentorには、「先人や現在汗を流している人々に失礼である」とすら感じられます。

Aさんが話している通り、得られた結果の確認やあるいは本来的にはモデルや仮説形成の糸口につかわれるべきものであって、地道だが正当な観察研究にかなうべきもありません。さらに付け加えるなら、共分散構造分析の有用性をどうのこうのは言いません。どのようなツールもその特徴や限界を知って、使うべきということです。

IM Mentor@べらんめえ調

「教授クラスでさ、単純解析や回帰を認めずにとにかくAMOSでやれ、そのやり方もローカルルールチック

「何考えているんだあ?」

「ブラックボックスに入れて、ガラガラポン、はい結果?!」

おれなんか、データの形がわかる 散布図や単純集計や解析のほうがずっと気持ちいい、幸せだぞ」

「データを手の内に感じられるし、なあんか腰が落ち着く」

「その色に咲け」

うーむ、ここのところ辛口発言が多いなあ。また一つ「師の言葉」を思い出しました。耳に痛い点が皆無とは言えませんが、今になって頂いた言葉に感謝しています。

 

師「将来君も色んなところで講演するだろうが、気を付けておくべきことがある」

自分「はい、それはなんでしょうか」

師「どの分野でも一流でなければ、人に語るべきものを持てない」

自分「うわ、それでは自分が話せるようになるにはいつになるかわかりません」

師「(笑) ちょっと表現が厳しかったか、でも君は僕同様、医師だよね」

自分「一応そうです(今のところ先生は仰ぎ見るだけの存在ですが)」

師「であるならば、臨床医として一人前であることが先だよ。社会に出たらわかるが、医師というだけでちやほやされるものだ。医学の世界で勝負できない医師が、他の医療職種例えば看護や栄養や介護、あるいは医療行政の聴き手を前に得意げに講演しているのをよく見るよね」*

自分「はい、ありますね」

師「自分の世界で通用しないものが、どうして他の分野でも本物足りえるだろうか。無理に決まっている。第一にそういう手合いは、自分のオリジナルな仕事で以て話さない(=ないから話せない)。そして例えばスライドの内容も、他の人の仕事なのにまるで自分がしたことのように話している」

自分「もし臨床医として一人前でなければ、話も底が浅くなる気がします」

師「そうだよ、そして君に言っておく。君は割合ユーモアのセンスがある、たぶんへき地でいろんな人と話して磨かれたのだろう。だが、お笑い芸人になってはいけない、自分の本道で勝負しなさい」

自分「肝に銘じます」

 

後日、この師の言葉を表す格言を知りました。「その色に咲け」

 

*若き人々が心しておくべき言葉と思います。30歳後半以降になって不可逆になる前に。