新規の博士(修士)課程

大学院に入る前に」にも書きましたが、新規の博士(修士)過程では、学位の取得状況や卒業者の進路などがはっきりしません。この場合、要注意です。

・資料に謳われていることがそのとおりか、入るまでわからない

・経験者、つまり履修した院生からの情報もない

 

この場合、研究指導教官の過去の実績や現在の研究活動を必ずチェックしましょう。見るべきは、最近5年間の原著筆頭論文ないし直接指導論文で、できれば英語です。書籍、学会発表、講演などはあてになりません。

 

高等教育が大学院に重点を移すということで、いろんな大学が学部の上に大学院を設置しています。この場合、大学院はそれにふさわしい教員を雇用すべきですが、大学にそんな余裕もなく、現実は学部教員がそのまま大学院の教員になっていることが圧倒的です。博士課程開設時には、大学院としての設置基準を満たしているかどうか教員もチェックを受けますが、指導に最も重要である、「現役で研究(指導)をばりばりしている」ことは必ずしもそれでは判明しません。

 

それから、大学院の開設者や専攻長などは高いモチベーションがあるでしょうが、教員個々はその保証はありません。「給与も増えないのに大学院も兼担しないといけないのか」と思う教員がいる可能性は否定できません。

 

大学院、とくに博士課程での経験は、強く研究指導者の影響を受けます。新規過程で(=大学院としての実績は未だ)で、かつ指導を仰ぐ教員に研究指導能力*がないような場合、不幸な結果になることが多く、IM Mentorもそれを多く見てきています。はっきり言って、避けるべきでしょう。

 

*PubMedないし医中誌で、指導者の筆頭または直接指導の原著論文を探す。前者ならローマ字で、後者ならそのまま指導者の氏名を入れればいいのです。両方の最近5年間論文数で5本以上でしょう。なお、直接指導はわからないことも多いので、もし筆頭に限るなら最近10年間で5本でもいいかもしれません。最低この位はないと、とても研究指導はできません。

 

良き指導者:学位や研究業績がなくても

このサイトの多くの場所で、研究指導者の条件などを書いてきました。では、一見逆説的ですが、学位や過去・現在の研究業績がなければ、良い指導者とは言えないでしょうか。少ないとは思いますが、例外があります。自分に研究業績、したがって指導能力はないことを自覚して、院生など弟子を囲い込まずにオープンに学ばせる人がそうです。

・指導できる人を自ら紹介する、あるいは院生などが見つけてきた人の指導を認める

・(人徳で)部下に優秀な研究者を持っている

 

中途半端に学位だけ持っていたり、原著でもない論文をいくつか持っている、と言う場合はプライドが邪魔するのでしょうか。なかなかこうはなりません。そして、こういう指導者かどうかは、それこそ入ってみないとわからないでしょう。そしてさらに言えば、こういう人は稀有です。IM Mentorは残念ながら、自分と同世代あるいは下で、こういう人には出会ったことがありません。

 

元に戻りますが、オーソドックスに、過去および現在の研究業績があってと実践している研究者を、指導者に選びましょう。それが一番です。