令和3(2021)年度科学研究費助成研究・実施報告

基盤研究(C)(一般) 

課題番号 20K10332

研究課題「医師の属性は人口地理的分布にどのように関わっているか-縦断的分析-」

補助事業期間 令和2年度~ 令和6年度

 

・様式F-7-1 研究実施報告・研究成果の概要

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1994・2004・2014年の医師調査データから、この3時点において記載があった医師集団を抽出した。1994年の(記載)医師数は230,519人であり、そのうち185,582人(81.5%)が2004年の、148017人(64.2%)が2004および2014年にも記載されていた。従って、この医師集団について、10年後および20年後の分析を行った。

男性医師は130,444人、女性医師が17,573人中で男性医師が88.1%を占めた。1994年における平均年齢は40.4歳、平均経験年数は13.8年であった。全医師について経験年数別に10年後および20年後の移動を、勤務市町村の人口および都道府県庁からの市役所・役場距離で評価した。

①市町村の人口指標から:1994年から2004年にかけて、より人口が少ない市町村に勤務した医師は39.8%であった(男性医師40.3%、女性医師35.9%)。2004年から2014年にかけて、より人口が少ない市町村に勤務した医師は48.6%であった(男性医師49.4%、女性医師42.9%)。1994年から2004年にかけてのみ、少ない経験年数(従って若い)医師群でその割合がわずかに多かった。

②市町村の距離指標から:1994年から2004年にかけて、より都道府県庁からの距離が大きい市町村に勤務した医師は23.9%であった(男性医師23.9%、女性医師23.7%)。2004年から2014年にかけて、より都道府県庁からの距離が大きい市町村に勤務した医師は14.2%であった(男性医師14.4%、女性医師12.4%)。経験年数別では、より少ない(従って若い)医師群でその割合が多かった。

この医師集団は1994年には医籍に登録されており、新医師臨床研修制度以前の医局を中心とした教育・派遣制度にあったと考えられる。特に距離指標において、より僻遠な市町村に勤務していたのはその影響による可能性がある。また、女性と男性医師の分布における差が(先行研究などからの)予想よりも少なかったことも、それによる可能性がある。この医師集団の分布動向と、これ以降に新しく登録された医師集団との比較をすることで、これらの評価が可能になると考える。また、研究者の先行研究では若い医師ほど流動性があることが指摘されているが、本分析結果はこれと合致するものである。

 

キーワード 医師分布、市町村、人口指標、距離指標、