Practice based research:strength(強み)

Practice based researchの強みですが、以下の2つがあります。

データの取得・分析が容易
結果を実際の臨床に反映(translate)しうる
結果を自分が担当する地域住民の健康問題に反映できる
日常臨床へのフィードバック自己啓発の手段

さらに追加として
–臨床の場が研究のフィールドなので、時間と労力が節約できる
ー第2・3次医療機関からの研究に比べて、一般性に優れる
–「研究」の全体像を学ぶことができる*
–したがって研究の規模が大きくなっても対応できる(Scalabilityがある)

*学位審査を取り上げると、審査委員が評価するのは、その学位申請者が独立した研究者としての資格があるか、したがって学位審査の対象研究で全ての面で仕事をしたかどうかです。PBRは本来そうしたものですので、全く問題がありません。有名医学雑誌に掲載された論文でも、学位申請者がその仕事の一部分しか担当してないことがあります。それよりは、そうした雑誌でなくても、申請者が全てにわたって貢献したほうがはるかに望ましいし、研究者としても信頼がおけます。研究仲間にしたいのは、当然後者ですね。さらに、全体像を経験しているので、研究規模がスケールアップしても対応しやすいでしょう。研究の要素は規模に関わらず、同じですから。

Ecology of Medical Care

・Generality(一般性)

Kerr Whiteの論文から:左上ほど一般住民に近い研究ができる
Kerr Whiteの論文から:左上ほど一般住民に近い研究ができる

Practice based、つまり実際の現場から発しているので、狭義の医療に限定する必要はありません。福祉や介護、そして看護など、人々の健康問題に関することであれば、全てPractice based researchとなります。そして、疾患や健康問題に限定する必要もありません。人々の暮らしの中に、私たちが関わること全てが対象となりうると思います。

 

上記は広義の一般性ですが、研究に限定しても、例えば3次医療機関でなく、地域の人々に近いレベルの研究は、「狭義」の一般性も高いと言えます。

井上K語録:ある若手研究者Bとのやりとり

The Health Care Ecology Model (Kerr White) 出典:下記Link
The Health Care Ecology Model (Kerr White) 出典:下記Link

再度述べますが、地域の人々や第一線の医療機関(First contact)などの場所での研究は、その対象集団の一般性に利点があります。大学病院などの3次医療機関などと違って、Selectionがそれほどかかりません。

例えば、コホート研究で取り上げた論文ですが、これは人口約3,500人の村である時点で65歳以上、住民基本台帳に登録された1,000名あまりの全高齢者を対象にしています。死亡と言うアウトカムで見た5年間の追跡率は86%でした。研究疑問はある意味で言えばごくありふれたものかもしれません。しかしながら、地域の対象住民全員を追跡し、この追跡率を得たという意味で、評価されたのだと思っています。

 

この有名なWhiteのHealth Care Ecology Model*ですが、これは研究にも適合できます。この色分けされたキューブは、例えば赤(住民全体)、黄(潜在的な健康問題?)、緑(プライマリ・ケア)と想定してもいいでしょう。一方、高次医療機関は黒や灰色です。どちらのほうが、より地域の現場での事象に近いかは、言うまでもないでしょう。

 

*日本におけるこのModelについては福井らのグループが優れた論文を出しています(もっと評価されていいと思います、和文での要約関連文献)。

 

Scalability(拡張性)

PBRでは研究者は規模が大きくなっても対応できる 拡大@クリック
PBRでは研究者は規模が大きくなっても対応できる 拡大@クリック

日常診療で通り過ぎていくところにテーマはある

Inoue Methods作成者は、Practice based research(PBR)の本質をこう考えています。

そのベースが、リアルでしかも研究者は研究の全ての局面に関わります。したがって、そこで経験したことは、研究の規模がどんなに変わっても対応できるものになります。

 

学位取得を例にとります。学位審査の主眼は、「その研究者が、独り立ちして研究ができるか」ですが、それ故チェックするのは、学位申請した当該研究の全てにその研究者が関わったかどうかです。

 

PBRは、それについて最初から回答を持っています。「そのとおりなのですから」

 

提示例

同じ研究疑問でしたが、こう進化しました。研究A研究B しかしながら、研究者の想いは不変です。

Inoue Methods作成者が、バックグラウンドストーリーを語っています。