はじめに(Introduction)の清書:実は腕の見せ所

運よくAbstractで興味を持ってもらった場合、Introductionで、Editorを含む読者はそれ以上を読むか決めます。

 

記載内容例

1. 論文トピックの分野

2. これまでにそのトピックでわかっていること

3. 現状でわかっていることだけだと何が問題か

4. そのトピックでわかっていないこと

5. わかっていないことで、わかったら意義があることとその理由

6. だから、研究者はそれに対してどうしたか

ここまでを明瞭・簡潔に書き、読者が興味や面白味を感じてくれるかが勝負です。

 

Introductionは読者の「つかみ」のパートであり、最大限に力量が要求される。

簡潔・明瞭で面白く、さらに読みたくさせられるかどうか!

内容とルックスの両方が要求されます。以下にInoue Methods作成者の考えるポイントを書きます。

Point 1:読者と同じ視点・水準に立つ

論文のTitleやAbstractを読んで、幸運にも興味を持ってくれ、論文本体を読もうとしてくれる人がいます。あなた(著者)はここで、その読者が迷わないように、上手に案内しないといけません。

 

「Introductionでは文字通り著者は読者にその論文を紹介する」

Point 2:読者はAbstractは読んでいる

TitleとAbstract、そしてTables and figuresはもう既に読者は読んでいます。そしてIntroductionで、これ以降論文を読むかどうか、読むに値するか決めます。

 

Introductionでは文字通り著者は読者にその論文を「紹介」します。したがって、AbstractのBackgroundはIntroductionの一部分です。

 

IntroductionはBackground(Abstract)の拡大版ではない

Point 3:From broad to focused

Introductionでは、その雑誌を読む読者であれば誰でも読めばわかるTopicから書き始め、学究されるべき課題を提示し、自分たちがその課題に対してどうしたのかを記載します。

ある論文の場合 

IntroductionのSequence

・What is the topic to be explored.→テーマの提示

 糖尿病に進展するであろう個人を早期に同定することは重要である

 

・What is already known on the topic.→そのテーマでわかっていること

   発症の予測(危険)因子として様々なものがある。血液検査では血糖値に加えてHbA1cが導入され、最近ではその組み合わせで予測することが有効とされている。

 

・What is yet unknown on the topic to be explored.→そのテーマでの課題

 しかしHbA1cはまだ発展途上国などでは導入されておらずかつ高価である。

 

・What we did to resolve this question.→それに対してどうしたか

 簡便・安価に測定できる空腹時血糖値の2回測定での予測能を検討した。

Point 4:Small is beautiful.

論文全体に言えることですが、特にIntroductionでは重要です。簡潔に、「論文を売り込む」ことです。

 

「そんなこといっても、長い苦労でやっと研究ができた。書くことはいっぱいある」

 

気持ちはわかりますが(笑)、長ければ長いほど途中で読者が放り出す可能性があります。ちなみにEditorも(放り出しはしませんが)、同じです。

 

全体で英文であればせいぜい500-600語、3-4パラグラフまでにしましょう。上の論文の場合は360語、3パラグラフでした。

 

そして、下の事実があります。

 

著者の頭の中で整理がついているほど、論文は簡潔にできる

 「論文は長ければ長いほど良い」と言ってたら、それは反面教師です。

Point 5:To our knowledge, は使わない

To our knowledge, no study has examined.......

(我々の知る限り、....を調べた研究はない)

 

研究のOriginalityを示すためによく使われていた言い回しです。ですが、現在ではInoue Methods作成者は推奨しません。

・読者にとっての新規性の保証にはならない

・今や全ての資料を調べるのは困難である

・もし査読者から見て違っていたら(査読者はその分野のプロ)評価がかなり下がる

 

では、以下ではどうなるでしょうか。

To our knowledge, no study has examined.......in a Asian population.

(我々の知る限り、アジア人で....を調べた研究はない)

 

これは微妙です。もし例えば糖尿病のように人種や生活様式で有病率・罹患率などが違いうるのであればOKでしょう。そうでなければ意味はありません。

 

続いて、以下ではどうなるでしょうか。

To our knowledge, no study has examined.......in a Japanese population. 

(我々の知る限り、日本人で....を調べた研究はない)

 

先ほどの例で言えば、日本人がかなりアジア全体と様相が違っていればニュースです。例えば、高い糖尿病の有病率で知られるAmericaのPima Indianがその例ですね。そうでなかったら、意味はありません。せいぜい、国内で発表するくらいです。

 

関連項目→どらえもんモドキ病